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Relative contribution of sensory and motor deficits on grip force control in patients with chronic stroke. Clinical Neurophysiology  2024. 問合せ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 博士後期課程 赤口 諒(アカグチ リョウ) センター長 森岡 周(モリオカ シュウ) Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: [email protected] 2024.03.29 中枢性感作関連症状と疼痛強度に基づいた筋骨格系患者の臨床転帰~ニューロリハビリテーション研究センター 痛みが慢性化する要因となる痛覚変調性疼痛には、損傷量から予測されるよりも広い範囲で生じる強い痛みや疲れやすさ、不眠、記憶力の低下、気分の不調といった様々な症状(中枢性感作関連症状)が含まれています。畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターの 重藤 隼人 客員研究員と同大学院 博士後期課程の 古賀 優之 氏、森岡 周 教授らは、このような中枢性感作関連症状と疼痛強度に基づいたグループ分類において、中枢性感作関連症状が強いことは疼痛強度にかかわらず臨床転帰が不良になることを明らかにしました。この研究成果は、Scientific Reports誌(Characterizing clinical progression in patients with musculoskeletal pain by pain severity and central sensitization-related symptoms)に掲載されています。 研究概要 筋骨格系疼痛患者は、しばしば不眠や疲労といった中枢性感作関連症状(Central sensitization-related symptoms: CSS)を呈します。しかしながら、疼痛が軽度でもCSSが強かったり、CSSが軽度でも疼痛が強かったりと、個々の患者で臨床症状は様々です。本研究では質問紙表の結果を用いたCSSと疼痛強度の重症度から4つのグループに分類し、横断的な特徴や縦断的な臨床転帰を分析しました。 本研究のポイント ■ CSSと疼痛強度によって分類された4つのグループでは、身体知覚異常や心理的要因の観点から特徴が異なることがわかりました。 ■ CSSと疼痛強度が共に軽度のグループではNRSの改善が良好でしたが、その他のグループでは改善しにくい傾向があり、とりわけCSSが重度な二つのグループでは臨床転帰が不良であることが分かりました。 研究内容 有痛患者を対象に、短縮版CSI(CSI9)と様々な性質の痛み強度を点数化するShort Form McGill Pain Questionnaire – 2(SFMPQ2)を評価し、これら二つの質問紙の評価結果に基づいて、4つの群に分類しました。横断的分析の結果から、各群で異なる特徴が抽出されました(図1)。   図1 :多重比較結果に基づく各グループの特徴   疼痛/CSSがともに強いGroup3は疼痛強度、CSS、身体知覚異常、心理的要因が全て重度でした。これに対し、Group4は身体知覚異常と心理的要因が軽度~中等度であり、Group2は疼痛強度、身体知覚異常が重度であるという特徴がみられました。Group1は全ての項目が軽度でした。   縦断的解析として、Numerical Rating Scale(NRS)のMinimal Clinically Important Difference(急性痛: 22%、慢性痛: 33%)に基づいた1ヵ月後の疼痛改善者割合を分析したところ、Group1のみ改善は良好であり、Group2、3、4は改善しにくい傾向にあることがわかりました(図2)。   図2:各群におけるNRS改善者割合の比較   Group1は疼痛改善が良好でしたが、Group2、3、4は疼痛改善が良好とはいえませんでした。また、CSSが重度なGroup3、4では約5割しか疼痛改善者がいませんでした。   更に、個々の患者が縦断的にどの群へ移行するかを分析したところ、CSSが重度なGroup3、4では、軽症群であるGroup1への移行が少ないことに加え、痛みがさほど強くないGroup4に属する患者の一部(5/40人、12.5%)は重症群であるGroup3へ移行していることがわかりました。 本研究の臨床的意義および今後の展開 不眠や疲労感といった関連症状が強い場合、臨床転帰が不良となりやすく、痛みが軽度でも改善しにくいことや、一部の患者は重症化することもあるため、患者の訴えを注意深く観察し適切に対処していく必要があります。今後は、このような関連症状を呈する患者の背景にある神経過敏性についても検証していく予定です。 論文情報 Hayato Shigetoh, Masayuki Koga, Yoichi Tanaka, Yoshiyuki Hirakawa, Shu Morioka. Characterizing clinical progression in patients with musculoskeletal pain by pain severity and central sensitization-related symptoms. Sci Rep. 2024 Feb 28;14(1):4873. 問合せ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 客員研究員 重藤 隼人(シゲトウ ハヤト) センター長 森岡 周(モリオカ シュウ) Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: [email protected] 2024.03.29 急性期運動器疾患患者におけるサルコペニアの骨格筋量指標に関連する要因の検討-Sonographic Thigh Adjustment RatioとSkeletal Muscle Indexとの比較-~健康科学研究科 サルコペニア*は加齢に伴い、筋肉が痩せ衰える疾患であり、国際的にも注目されている老年医学のトピックの一つです。サルコペニアは骨折や人工関節術後(運動器疾患)患者さんの機能回復に悪影響を及ぼすことがわかっているため、早期発見・早期介入が重要になってきます。 サルコペニアの診断基準であるAsian Working Group for Sarcopenia 2019(AWGS2019)では、骨格筋量の測定が必須になります。生体電気インピーダンス法(Bioelectrical Impedance Analysis:BIA)を用いた機器(体組成計)によって測定された四肢の骨格筋量を身長(m2)で除したSkeletal Muscle Index(SMI)が広く用いられています。BIA法は汎用性の高いものの、今回、対象となる運動器疾患患者さんによく見られる浮腫や手術後に体内金属があると誤差が出やすいことが指摘されています。 一方、2021年に国際リハビリテーション医学会からISarcoPRMという新たなサルコペニアの診断基準が提案されました。AWGS2019との大きな違いは骨格筋量の評価方法として、超音波画像診断装置(エコー)で測定した大腿四頭筋の筋厚をBody Mass Index(BMI)で除したSonographic Thigh Adjustment Ratio(STAR)が導入されたことです(図1,2)。その理由として、骨格筋量の低下は一般的に下肢から起こりやすく、大腿部に着目することでより早期の変化を捉えられる可能性があることが挙げられます。また、浮腫などの影響を受けにくいという特徴があり、急性期の運動器疾患患者に対するサルコペニアの評価として有用ではないかと考えられます。 しかし、今までわが国でSTARに関する研究は実施されておらず、また、SMIと比較して関連する要因について検討したものもありませんでした。 そこで、本学大学院健康科学研究科修士課程の池本大輝、健康科学研究科の徳田光紀客員准教授、健康科学研究科の松本大輔准教授らは、急性期病院に入院された運動器疾患患者を対象に、STARとSMIを同時に評価し、それぞれの関連要因を比較、検討しました。その結果、STARとSMIは互いに相関せず、関連要因も異なり、独立した骨格筋量指標であることやSTARは入院前の歩行能力と関連が強い骨格筋量指標である可能性があることを明らかにし、その内容が日本栄養・嚥下理学療法雑誌に掲載されました。   *サルコペニア:加齢に伴う進行性の骨格筋量および筋力低下と定義されており、転倒、骨折、入院、死亡のリスクが高い疾患である。   研究概要 急性期病院へ入院された65歳以上の運動器疾患患者130名を対象に、サルコペニアの診断における骨格筋量指標であるSTARと SMIを評価しました。その他の評価には、入院前の歩行能力(Functional Ambulation Categories:FAC)、認知機能(Mini - Mental State Examination:MMSE)、栄養状態(Mini Nutritional Assessment Short Form:MNA - SF)などを評価し、SMIおよびSTARに関連する要因を相関分析・重回帰分析を用いて検討しました。     図1:エコーによる大腿四頭筋筋厚の測定風景   図2:エコーで測定した筋厚の代表的な画像(撮像:池本)   本研究のポイント STARとSMIの間に相関関係を認めなかったことから、互いに異なる骨格筋量指標である可能性が示唆されました。 また、STARには入院前の歩行能力のみが正の関連を認めました(図3)。一方で、SMIには性別や疾患種別、栄養状態等が関連し、入院前の歩行能力は負の関連を認めました。       図3.STAR と入院前歩行能力の散布図     本研究の臨床的意義及び今後の展開 本研究は、わが国で初めてSTARを用いた研究です。STARはSMI とは異なる要因を含んだ骨格筋量評価であり、年齢・性別や栄養状態とは関連が少なく、より歩行能力(身体機能)を反映した骨格筋指標である可能性が明らかとなりました。STARの理解が深まるだけでなく、エコーを用いた骨格筋量評価を実施する際の貴重な情報になると考えられます。今後は、STAR の臨床的な有用性について更なる検討を行い、対象者の皆様に還元できる研究を進めてまいりたいと思っています。 謝辞 研究にご協力いただきました対象者の皆様、共同研究者の方々に感謝申し上げます。 論文情報 池本大輝,徳田光紀,松本大輔・他:急性期運動器疾患患者におけるサルコペニアの骨格筋量指標に関連する要因の検討-Sonographic Thigh Adjustment RatioとSkeletal Muscle Indexとの比較-.日本栄養・嚥下理学療法学会雑誌.2024.早期公開   問合せ先 畿央大学大学院健康科学研究科 修士課程 池本大輝 准教授  松本大輔 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: [email protected] 2024.01.10 脊髄小脳失調症患者の立位姿勢制御能改善に着眼した効果的な理学療法:症例報告~ニューロリハビリテーション研究センター 脊髄小脳変性症(SCD)は、小脳や脊髄の神経変性によって発生する運動失調を主症状とする進行性の疾患です。姿勢バランス障害は、SCDの主な症状の一つです。ライトタッチは姿勢の揺れを軽減するための広く知られた方法ですが、四肢に運動失調を持つSCD患者には適用されていませんでした。本学理学療法学科4年の岩佐しおりさん、摂南総合病院及び本学の博士後期課程の赤口諒さん、森岡周教授らの研究チームは、SCD患者の理学療法として体を壁に軽く接触させてリラックスした状態での静的立位保持を行い、その後、段階的に動的な姿勢バランス練習を導入することで、立位姿勢バランスと運動失調、日常生活動作(ADL)の改善に寄与したと報告しました。この研究結果は「Cureus」誌に「Changes in Standing Postural Control Ability in a Case of Spinocerebellar Ataxia Type 31 With Physical Therapy Focusing on the Center of Gravity Sway Variables and Lower Leg Muscle Activity」と題して掲載されました。   研究概要 脊髄小脳変性症(Spinocerebellar Degeneration:SCD)は、小脳や脊髄後索の運動失調を主要な症状とする進行性の疾患です。SCD患者は姿勢バランスの維持が困難であり、多くの症例で転倒が報告されています。姿勢の揺れを軽減する手段としてライトタッチが知られていますが、これは通常、指先で行われ、四肢の運動失調があるSCD患者では適切な感覚情報の取得が困難になることがありました。本学理学療法学科4年の岩佐しおりさん、摂南総合病院および本学の博士後期課程の赤口諒さん、森岡周教授らによる研究では、壁面を利用したライトタッチの理学療法を介して段階的に動的な姿勢バランスへの移行を図り、その結果、SCD患者の立位姿勢バランスの改善と運動失調、日常生活動作(ADL)の向上が見られました。これらの効果は姿勢動揺及び立位保持時の筋活動の分析を通じて検証されました。 本研究のポイント ■進行性の脊髄小脳変性症(SCD)患者でも、適切な段階的理学療法を実施することで姿勢バランスが改善されることが示されました。 ■上肢に運動失調を持つSCD患者にとって、壁面への軽いタッチを利用することが有効であることがわかりました。 ■安定した静的立位姿勢の維持が、過剰な筋活動の抑制に寄与し、それが動的な姿勢バランスの練習へとつながることが確認されました。 研究内容 対象となったのは、6年前にSCDと診断され、その後の転倒により右第5中足骨基部と左脛骨近位部を骨折し、理学療法を開始した60代の患者です。左右の上下肢に運動失調が見られ、特に左下肢の運動失調が顕著であり、立位と歩行の能力が著しく低下していましたが、何とか意図的に立つことが可能なレベルでした。理学療法の介入初期から中期にかけてはライトタッチを利用し、力を抜いて楽に立つ練習を行いました。静止立位が安定した後期には、随意的な重心移動と道具を用いた関節間協調運動の練習を実施しました。歩行練習も計画通りに実施されました。理学療法の進行は初期から最終まで4期に分けて行われ、各期間は1週間ずつ設定されました。各段階でADL、歩行能力、SARA(包括的な運動失調検査)、BBS(包括的な姿勢バランス検査)、重心動揺、筋電図などの検査・測定を図1に示す通り行いました。     図1 :病歴および理学療法の経過 上図:特異的な姿勢バランス練習介入開始までの現病歴、下図: 特異的な姿勢バランス練習の内容・経過   患者は歩行器を用いて自立歩行が可能な状態で退院しました。また、BBS(Berg Balance Scale:包括的バランス尺度)とSARA(Scale for the Assessment and Rating of Ataxia:運動失調評価のための尺度)も改善が見られました。初期から最終段階にかけて、姿勢動揺が軽減しました。動揺面積と動揺速度、特に前後動揺の高周波パワー値(前後HF)の減少が認められました(図2A, B参照)。初期では、右前脛骨筋(Tibialis Anterior:TA)の活動が顕著でした(図2C参照)。その後、右前脛骨筋の活動が減少し、ふくらはぎのヒラメ筋(Soleus:Sol)とTAの同時収縮指数は初期から中期に増加しましたが、中期から後期にかけては減少しました。交差的時間差相関分析の結果、左ヒラメ筋と前脛骨筋の同時収縮とSARAの間には時間差のない負の相関関係が見られました。   初期に右前脛骨筋の過剰な活動により姿勢が不安定でしたが、ライトタッチによる姿勢練習を導入し、本介入が進むにつれて姿勢の揺れや前脛骨筋とヒラメ筋の同時収縮指数が減少しました。これは健常幼児の発達過程に似た自動的な姿勢制御への移行を示唆しています。結果として、段階的な介入によって進行性SCD患者にも顕著な理学療法の効果が得られることが示唆されました。     図2:重心動揺および筋活動の経過   本研究の臨床的意義および今後の展開 進行性の脊髄小脳変性症(SCD)患者において、壁面への軽いタッチを用いることで、過度な筋肉の収縮を伴わずに安定した立位を維持する学習が可能であることが示されました。これは意図的な姿勢制御を減らすことに繋がり、結果としてより動的な姿勢バランスの練習が実施可能であることが確認されました。この結果は、戦略的かつ適切な理学療法を実施することで、進行性の脊髄小脳変性症の患者にも有効である可能性があることを示唆しています。 論文情報 Shiori Iwasa, Ryo Akaguchi, Hiroyuki Okuno, Koji Nakanishi, Kozo Ueta, Shu Morioka Changes in Standing Postural Control Ability in a Case of Spinocerebellar Ataxia Type 31 With Physical Therapy Focusing on the Center of Gravity Sway Variables and Lower Leg Muscle Activity Cureus, 2023 問合せ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 畿央大学大学院健康科学研究科 センター長/教授 森岡 周 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: [email protected] 2024.01.10 高齢者では「気持ちの年齢」が実年齢を超える場合、生活機能の低下と要介護リスクを増加させる可能性 :KAGUYAプロジェクト高齢者縦断調査より〜理学療法学科 個人の健康状態や将来の疾病リスクを反映する代理指標として主観的年齢(気持ちの年齢)が注目されており、将来の健康状態を評価するための生物心理社会的マーカー(Biopsychosocial Marker)として広く研究されています。主観的年齢や老化感(Self-perceptions of Aging)と疾患の発生との関係を調べた研究では、主観的年齢が高く、よりネガティブな老化感を有する者は、心臓疾患および脳卒中の発生リスクが高いことが示されており(Stephanら, 2021)、また死亡リスクとの関係を調べた縦断研究では、主観的年齢が高い人は、低い人よりも死亡率が高いことが報告されています(Ripponら, 2015)。 理学療法学科の高取克彦 教授、松本大輔 准教授らは、KAGUYAプロジェクト高齢者縦断調査にて奈良県A町在住の高齢者を対象に主観的年齢と高次生活機能(買い物、公共交通機関の利用などレベルの高い生活機能)および新規要介護認定の発生との関係を明らかにするために3年間の追跡調査を実施しました。結果として、地域在住の一般高齢者において主観的な年齢が実年齢を超える者は、将来の高次生活機能を低下させ、要介護リスクを増加させる可能性があることが分かりました。この研究内容は日本老年医学会雑誌に掲載されました。 研究概要 奈良県A町の地域在住高齢者を対象に郵送式調査を行い、3年間追跡調査が可能であった2,323名を分析対象としました。主観的年齢の評価は「気持ちの年齢についてお答えください」という問いに対して「年相応」「実際の年齢より若い」「実際の年齢より上である」の選択肢を設定しました。その他の評価には、高次生活機能(老研式活動能力指標および JST 版活動能力指標)、運動定着(週1回以上の運動実施)などを聴取し、追跡調査時にはこれらに加え、対象者の新規要介護認定の発生状況についても調査しました。 その結果、調査開始時において「実際の年齢より上」と感じている者は高次生活機能、一般性自己効力感(物事をやり遂げる自信)が有意に低く、他群に比較して運動が習慣化している者が少ない結果となりました。 また追跡調査時に「実際の年齢より上である」と感じている者は他群に比較して新規要介護発生が多く、反対に「実際の年齢より若い」と感じている者では少ないことが分かりました。さらに新規要介護認定を従属変数としたロジスティック回帰分析の結果で は、他の関連因子を調整しても「実際の年齢より上」と感じることが独立したリスク因子であることが明らかとなりました(OR=3.33,95%CI: 1.02~10.94,p<0.05)。 本研究のポイント ■地域高齢者の大規模コホートを3年間の前向きに調査し、調査開始時の主観的年齢と追跡調査時の高次生活機能および新規要介護認定との関係性を明らかにした。 ■調査開始時において「実際の年齢より上」と感じている者は 高次生活機能、一般性自己効力感が有意に低く、他群に比較して運動が習慣化している者が少なかった。 ■ 追跡調査時に「実際の年齢より上である」と感じている者は他群に比較して新規要介護発生が多く、反対に「実際の年齢より若い」と感じている者では少なかった。(図1) 図1: 主観的年齢と高次生活機能との関係   ■年齢・性別など関連因子を調整しても「実際の年齢より上」と感じることが要介護状態発生の独立したリスク因子であることが明らかとなりました。(図2) 図2:主観的年齢と新規要介護発生リスクとの関係   本研究の意義 本研究は本邦で初めて地域高齢者の主観的年齢と新規要介護発生との関係を縦断的に調査したものになります。欧米での研究においては要介護認定という指標が存在しないため、日本における介護予防的な視点とはやや異なります。したがって日本人の高齢者を対象とした本研究の結果は、主観的年齢を評価することの重要性と、新たな心理社会的アプローチを考える上での一助になるものと考えられます。 論文情報 高取克彦,松本大輔・他:地域在住高齢者における主観的年齢と高次生活機能および新規要介護認定との関係-KAGUYAプロジェクト高齢者縦断調査より-. 日本老年医学会雑誌60巻4号(2023:10) 問合せ先 畿央大学健康科学部理学療法学科 教授 高取 克彦 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: [email protected] 地域リハビリテーション研究室ホームページ 2023.12.28 振動を用いた接触タイミング知覚生起が脳卒中後上肢機能に及ぼす影響:症例報告~ニューロリハビリテーション研究センター 脳卒中後の麻痺した手指の感覚運動機能障害に対するリハビリテーションとして、視覚刺激、電気刺激、聴覚刺激が使用されていますが、これらは物品を操作する際に必要な手指と物品との間の摩擦(動摩擦)情報をリアルタイムにフィードバックすることはできません。本学 理学療法学科4年生 淡路彩夏氏、岸和田リハビリテーション病院及び本学客員研究員 渕上健氏、森岡周教授らは、感覚運動障害を持ち回復が停滞している脳卒中後の症例に対し、動摩擦情報をリアルタイムにフィードバック可能な新しいリハビリテーション装置を使用して介入を行い、その有効性を報告しました。この研究成果は、「Cureus」誌において「Effects of Vibration-Based Generation of Timing of Tactile Perception on Upper Limb Function After Stroke: A Case Study」として掲載されています。 研究概要 脳卒中後の感覚運動機能障害に対するリハビリテーションとして、視覚刺激や電気刺激、聴覚刺激を用いることが紹介されています。しかし、手指での物体の把持・操作においては、手指と物品との摩擦(動摩擦)情報が重要になります。本学理学療法学科4回生 淡路彩夏氏、岸和田リハビリテーション病院および本学の客員研究員である渕上健氏、そして 森岡周教授らは、脳卒中後の感覚運動障害により麻痺側上肢機能の回復が停滞している患者に対して、動摩擦情報をリアルタイムでフィードバックできるウェアラブル装置を用いたリハビリテーション介入を実施し、手の感覚運動機能障害の改善効果を検証しました。 本研究のポイント ■ 脳卒中後の感覚運動機能障害により、麻痺側上肢機能の回復が遅延している症例を対象としました。 ■ リハビリテーション介入に、動摩擦情報をリアルタイムでフィードバックできるウェアラブル装置を使用しました。 ■ 停滞していた麻痺側上肢機能が回復し、物品操作時の過剰なつまみ動作や物品落下頻度の減少が確認されました。 研究内容 患者は70歳代の男性で、出血性脳梗塞による左上下肢麻痺と診断され、発症後20日目にリハビリテーション病院に転院しました。転院後、毎日2時間以上のリハビリテーションを1ヵ月実施し、Fugl-Meyer Assessment Upper Extremity(FMA-UE)は51/66点、Box and Block Test(BBT)は20個、9-Hole Peg Test(9-HPT)は86.6秒まで回復しましたが、上肢の表在感覚と深部感覚に障害を認め、麻痺の回復はその時点で停滞し、依然として物体操作時に物体の落下が生じていました。 そこで、動摩擦情報をリアルタイムでフィードバックできるウェアラブル装置を介入に取り入れました。この装置は左手指に取り付けた触覚センサーで左手指の触覚情報を取得し、その情報を振動情報に変換し、左鎖骨遠位端に装着した振動子から伝達する仕組みになります(図1-A)。9-HPT(図1-B)を毎日5回、計15日間実施し、そのうち6日目から10日目にウェアラブル装置を装着しました。     図(A)ウェアラブル装置はセンサーを麻痺側人差し指に装着し、物品に触れた際の触覚情報を振動に変換し、鎖骨に装着した振動子から伝達します。(B)9-Hole Peg Test(9-HPT)は皿からペグを9つの穴に入れ、再び皿に戻すまでの所要時間を計測します。ペグをテーブルに落とした場合はエラーとして始めからやり直しました。介入プロトコルは1〜5日目と11〜15日目はウェアラブル装置を装着せずに9-HPTを毎日5回実施し、6〜10日目はウェアラブル装置を装着して9-HPTを毎日5回実施しました。   評価はFMA-UE、BBT、感覚評価とし、15日間の前後に実施しました。また、運動主体感の変化を捉えました。さらに、5日間ごとの9-Hole Peg Test(9-HPT)のエラー数(ペグをテーブルに落下させた回数)と所要時間を算出し、それらの関係をクロスラグ相関分析にて確認しました。 介入による不快感や重大な有害事象は示しませんでした。FMA-UEは51/66点から61/66点となり、BBTは20個から23個に増えましたが、感覚機能の変化ありませんでした。ウェアラブル装置を取り入れていた6〜10日目の期間で「手指の感覚がわかった」という発言が出現し、その後の11〜15日目の期間にはウェアラブル装置がないにも関わらず「自分の動きの感覚がわかり、(物体を)見なくてもできるようになった」という内省が聞かれました。また、運動主体感の指標からも改善していることが確認されました。15日間における9-HPTのエラー数と所要時間について、どちらも時間経過とともに改善し、物品操作時の過剰なつまみ動作や物品落下頻度も減少しました。またクロスラグ相関分析から、エラー数が減少した後に所要時間が減少するという時間差の関係が確認されました。 これらの結果から、脳卒中後の感覚運動障害を有する上肢運動機能障害に対して、動摩擦情報をリアルタイムでフィードバックできるウェアラブル装置を取り入れたリハビリテーション介入が有効である可能性が示唆されました。 本研究の臨床的意義および今後の展開 脳卒中後、感覚運動機能障害により上肢運動機能の回復が停滞している患者のリハビリテーションに、動摩擦情報をリアルタイムでフィードバックできるウェアラブル装置を使用しました。その結果、それまで停滞していた上肢運動機能の回復が確認でき、物品把持に伴う過剰なつまみ動作と物品の落下頻度の両方が減少しました。これにより、動摩擦情報による知覚生成を用いたリハビリテーション介入が、脳卒中後の手指の感覚運動障害に対する新しい治療戦略となる可能性が見つかりました。 論文情報 Ayaka Awaji, Takeshi Fuchigami, Rento Ogata, Shu Morioka Effects of Vibration-Based Generation of Timing of Tactile Perception on Upper Limb Function After Stroke: A Case Study Cureus, 2023 問合せ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 畿央大学大学院健康科学研究科 センター長/教授 森岡 周 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: [email protected] 2023.12.26 外傷性脳損傷後の両眼性複視患者に対する眼球運動訓練と視線分析:症例報告~ニューロリハビリテーション研究センター 外傷性脳損傷後には両眼性複視を含む眼球運動障害を合併することが多いとされています。これらの障害は転倒による骨折の可能性を高め、日常生活活動や生活の質の回復に悪影響を及ぼします。特に複視症状を呈した患者の治療経過をまとめた報告はほとんどありません。岸和田リハビリテーション病院 中村 兼張 氏、本学客員研究員 渕上 健 氏、本学 森岡 周 教授らは、外傷性脳損傷後に両眼性複視を呈した患者に対して眼球運動訓練を実施し、その治療経過をまとめました。この研究成果は、Journal of Medical Case Reports誌(Eye movement training and gaze analysis for a patient with binocular diplopia after traumatic brain injury: a case report)に掲載されています。 研究概要 外傷性脳損傷患者の約90%が両眼性複視を含む眼球運動障害を発症すると報告されています。両眼性複視とは、1つの物体が2つの物体に知覚される状態であり、左右の眼球の視軸のズレによって引き起こされます。複視を含む両眼視機能の障害は、転倒による骨折の可能性を高め、運動能力や日常生活動作、QOLの回復に悪影響を及ぼします。複視に関連する輻輳、追視、およびサッカードに関する眼球運動訓練は既に臨床現場で導入されており、治療効果が報告されています。しかし、これまでの研究では、輻輳や近視、眼球運動障害に焦点が当てられることが多く、専門機器で測定できる複視症状に関する亜急性期からの長期的な追跡調査報告はほとんどありません。岸和田リハビリテーション病院の 中村 兼張 氏、本学 客員研究員 渕上 健 氏、本学 森岡 周 教授らは、両眼性複視を呈した患者に対して眼球運動訓練を実施し、眼球運動機能、複視症状のみでなく、視線推移の評価も加えて経過を追跡しました。 本研究のポイント ■ 両眼性複視に対する眼球運動訓練の治療経過を追跡した。 ■ 効果判定には、眼球運動機能と複視症状、そして視線推移を評価した。 ■ 治療効果が確認されるとともに、障害側だけでなく非障害側への訓練の必要性が示唆された。 研究内容 患者は30代男性で、外傷性脳損傷後に右眼球の外転方向への運動機能低下と両眼性複視症状を呈していました。運動麻痺や感覚障害、高次脳機能障害は認めませんでした。毎日2回、40分間の眼球運動訓練を行い、これを4週間継続しました。眼球運動訓練の内容は、セラピストがゆっくりまたは素早く右側に動かしたレーザーポインターを追視させること、右眼球を外転方向へ最大に動かし保持させること、@ATTENTION(クレアクト社製)に搭載された機能で点滅するターゲットを追視させることでした。 治療経過は、右眼球の外転方向への運動距離、正中からの複視出現角度、Holmesの複視質問票を用いて追跡しました。さらに、@ATTENTIONに搭載されている視線推移も計測しました。   右眼球の外転距離と複視出現角度(左図)、視線推移(右図)、視線座標の誤差ともに改善し、複視質問票の点数も介入前の76点から、2週後に26点、4週後に12点と改善を認めました。     左図:右眼球外転距離と複視出現角度の介入前、2週後、4週後の結果 右眼球外転距離(A)は介入前と比べて、2週後と4週後の距離が増加していました。複視出現角度(B)は介入前から2週後、4週後と経過する中で、出現角度が大きくなっていることから、複視が出現しにくくなっていることがわかりました。 右図:@ATTENTIONによる視線推移評価の結果 経過とともに視線推移のばらつきが減少していることが確認できました。   これらの結果から、眼球運動訓練を行うことで、障害されていた右眼球外転運動や複視が改善し、視線も安定することが確認できました。また、4週後には障害側の的と視線との誤差よりも、反対側の的と視線との誤差が大きくなっていたことから、障害側だけでなく、非障害側への眼球運動訓練の必要性が示唆されました。 本研究の臨床的意義および今後の展開 両眼性複視に対する眼球運動訓練の経過を追跡し、その有効性が認められました。さらに、視線推移分析から、障害側への眼球運動訓練だけでなく、非障害側への眼球運動訓練も必要であることが示唆されました。今後は、症例数を増やし、前向き研究デザインで効果を検証していく必要があります。 論文情報 Kaneharu Nakamura, Takeshi Fuchigami, Shu Morioka Eye movement training and gaze analysis for a patient with binocular diplopia after traumatic brain injury: a case report. Journal of Medical Case Reports, 2023 問合せ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 畿央大学大学院健康科学研究科 センター長/教授 森岡 周 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: [email protected] 2023.12.25 負傷競技者の感情調整行動に影響を与える個人差について~現代教育学科 負傷競技者が負傷によって引き起こされた陰性情動を持続的に抑制すると、リハビリテーションのような未来志向の対処行動に集中できないことや、過剰適応することで怪我の再発、深刻な場合は精神的な障害を引き起こすことがあります。一方で、陰性情動を抑制することによる影響は不適応な側面ばかりではなく、現状を肯定的に再解釈できているのであれば、必ずしも不適応的ではありません。つまり、負傷によって示す反応が適応的かどうかを判断する際は、抑制の視点だけではなく、現状を肯定的に再解釈できているかどうかの可能性を検討する必要があります。 現代教育学科の辰巳教授は陰性情動の抑制に影響すると考えられる要素を取り上げ、肯定的再解釈ができているかどうかを調査することで、不適応な反応をする可能性のある競技者を選別できるのではないかと考え、一定の負傷基準に基づく180名の対象者に対して調査を行いました。その結果、感情伝達困難さの傾向が強い負傷競技者は、負傷により生起させた陰性情動の表出を抑制することに終始する傾向があることで、不適応な反応を起こしやすいことを導きました。 この研究成果は、PLoS ONE誌(Individual-differences affecting emotion regulation behaviors of injured athletes: A retrospective quantitative study)に掲載されています。 本研究のポイント ■個人変数としてスポーツ倫理コミットメント、競技者アイデンティティー及び感情伝達困難さの3つを取り上げ調査 ■3つの個人変数と陰性情動への情動調整行動に関する表出抑制、肯定的再解釈との関連について、2つの仮説を検討 ■感情伝達困難さの傾向が強い負傷競技者は、負傷により生起させた陰性情動の表出を抑制することに終始する傾向が疑われる 研究内容 本研究では先行研究をふまえ、陰性情動に対する表出抑制の行使と関連する個人変数として、スポーツ倫理コミットメント、競技者アイデンティティー及び感情伝達困難さの3つを取り上げました。 スポーツ倫理とは、競技スポーツ界に浸透している組織合理を優先させる集団規範の内容(図1)をさし、抑制との関連が指摘されてきました。   図1.スポーツ倫理コミットメントに対する検証的因子分析結果   競技者アイデンティティーは、競技者としての自己意識を指し、このアイデンティティーが強固な負傷競技者は、スポーツ倫理に強く同調していることが仮定されます。感情伝達困難さは、自己感情の記述や伝達を困難にしている個人の傾向を指し、アレキシサイミア傾向を捉える一側面として知られています。 以上の3つの個人変数と陰性情動への情動調整行動に関する表出抑制、肯定的再解釈との関連について、回顧法による質問紙調査に基づく量的研究デザインを採用し、以下の2つの仮説を検討しました。   仮説1:スポーツ倫理コミットメントと競技者アイデンティティーは、抑制と肯定的再解釈の双方の行使を可能にさせる。具体には、スポーツ倫理コミットメントと競技者アイデンティティーは、抑制及び肯定的再解釈の双方に対し、正の関連を示す。 仮説2:感情伝達困難さは、肯定的再解釈を行使させず、抑制の行使のみに止まる。具体には、感情伝達困難さは、抑制に対しては正の関連を、肯定的再解釈に対しては負の関連を示す。 一定の負傷基準に基づく180名(平均年齢20.27歳,SD = 1.02;医師の診断に基づくスポーツ停止平均日数66.58日,SD = 87.13、同中央値は31日)を分析の対象としました。主な分析手順は、変数間の相関を検討し、重回帰分析よりパスの推定を行い、最終的に3つの個人変数を外生変数とし、2つの情動調整行動を内生変数とするモデルの適合性を構造方程式モデリングにより検討するというものでした。 分析の結果、2つの仮説は支持されました(図2)。   図2.構造方程式モデリングの結果   結果は、3つの個人変数全てが陰性情動の表出抑制の行使を促すことを示しています。次に、スポーツ倫理コミットメントと競技者アイデンティティーは肯定的再解釈の行使を促しますが、感情伝達困難さは肯定的再解釈の行使を妨げる可能性があることを示しています。また、スポーツ倫理コミットメントは競技者アイデンティティーと感情伝達困難さの双方と正の関連があることを示しています。 主な結論として、感情伝達困難さの傾向が強い負傷競技者は、負傷により生起させた陰性情動の表出を抑制することに終始する傾向があることから、アブノーマルな反応を顕在化させやすいと言えます。負傷競技者を取り巻く各種のプラクティショナーは、彼らがネガティブな情緒的反応の固着や反復を来していないか、情緒的反応の動向を注視する必要があります。 本研究の限界と今後の課題 本研究では調査協力者に対し、リハビリテーション期間全般の回顧を求め、マクロな視点から個人変数と情動調整行動の実態についての回答を求めました。この方法により、優勢であった情動調整行動を把握することができましたが、臨床現場で実際に示されている日々の反応は複雑であり、個別的です。本研究は仮説に基づく理論的傾向が示されたに過ぎません。知見の精緻化を図るには、調査協力者の記憶の偏りや調査時の心理状態が感情経験の想起に与える影響についても、十分に制御した計画にて研究を推進する必要があります。今後の研究では、負傷競技者を縦断的に追跡し、ノーマルな反応時とアブノーマルな反応時における変数間の関連の仕方の時系列を検討する必要があります。 論文情報 Tomonori Tatsumi Individual-differences affecting emotion regulation behaviors of injured athletes: A retrospective quantitative study PLoS ONE 2023 問い合わせ先 畿央大学 教育学部 現代教育学科 教授 辰巳 智則 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: [email protected] 2023.12.22 この痛みは私のせいじゃない:非予測的な負の出来事に対する認知過程~ニューロリハビリテーション研究センター 「この痛みは私のせいで起こったんじゃない」「あの先生のせいでこの痛みがあるんだ」など、自分が引き起こした行為や運動に伴って痛みが誘発されたにも関わらず、その痛みは自分のせいで起こったのではないと認識してしまうことがあります。畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターの 林田 一輝 客員研究員、森岡 周 教授 らは、非予測的な負の結果に対する認知過程について実験心理学的手法を用いて明らかにしました。この成果は、Consciousness and Cognition誌(I am not the cause of this pain: An experimental study of the cognitive processes underlying causal attribution in situations with unpredictable outcomes)に掲載されています。 研究概要 ある出来事について、それを生み出していると考えられる何らかの原因に結び付ける心理過程を原因帰属といいます。しばしば臨床では、「この痛みは私のせいで起こったんじゃない」「あの先生のせいでこの痛みがあるんだ」など、自分が引き起こした行為や運動に伴って痛みが誘発されたにも関わらず、その痛みは自分のせいで起こったのではないと原因帰属してしまうことがあります。このような患者は、他人に原因帰属をしてしまうため、患者教育が難渋する場合があります。痛みというネガティブな出来事を適切に原因帰属させることは、行動変容を促すために重要ですが、原因帰属は主観的な要素が多く科学的に扱うことが難しいため、その認知的メカニズムは不明でした。畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターの林田 一輝 客員研究員らの研究チームは、原因帰属を客観的に測定できるtemporal bindingという現象に着目し、行為を自分の意志で選択した場合(自由選択条件)と他者に強制された場合(強制選択条件)とで原因帰属が変化するのかどうかを、健常者を対象に実験的に調査しました。その結果、行為に伴って痛みが与えられた時、自由選択条件と比較して強制選択条件で自分への原因帰属が減少することが示されました。驚くべきことに、自由選択条件と強制選択条件では、痛みの程度は同等に感じていることも示されました。これらの結果から、他者のせいにする、といった原因帰属は、ネガティブな出来事そのものよりも自分でその行為を選択したかどうかが重要であることが示されました。 本研究のポイント ■ 自由選択と強制選択が痛みの原因帰属を変調させるかどうかの認知プロセスを調べた。 ■ 強制選択に痛みを伴うと自己への原因帰属が減少することが明らかにされた。 研究内容 強制選択が痛みの原因帰属に影響するかどうかを、健常者を対象とした実験で検証しました。単純な意思決定課題と痛み刺激を組み合わせた修正版temporal binding課題を用いました。Temporal binding課題とは、認知的な原因帰属を暗黙的かつ定量的に評価できる方法として知られています。あるキーを押して(行為を実行する)、100ms時間間隔を空けて、音が鳴る(出来事が起こる)という状況おいて、そのキー押しと音の間の時間間隔を参加者に推定させる課題です。推定した時間間隔が短いほど、行為と出来事の強い結びつけを認知しており、原因帰属を定量化できるとされています。   実験参加者は、自由選択条件と強制選択条件を遂行しました。画面上の3つのキーのうち1つは音だけが出る確率が最も高いキー、もう1つのキーは音と触覚刺激が出る確率が最も高いキー、最後のキーは音と痛み刺激が出る確率が最も高いキーであることが参加者に伝えられていました。自由選択条件では、痛み刺激を避けるようにキーを選択して押すように参加者に伝えられました。強制選択条件では、強制的に選択された黒塗りのキーを押すように指示されました。実際には、各キーはそれぞれの刺激を与える確率が同じでした(そのことを参加者は知りませんでした)。つまり、痛み刺激を受ける確率は、参加者がどのキーを押しても同じでした(33.3%)。すなわち、自由に選択できるかどうかの要因のみが操作されました。この課題にTemporal binding課題を組わせた実験を行いました。(図1)   図1:実験課題 キー押しの後、数100msの時間間隔が空いて、音のみ、音と触覚または音と痛みが提示される。その後、時間間隔の推定と痛みの程度をNumerical Rating Scale(NRS)にて評価する。自由選択条件と強制選択条件の両方を実験参加者は遂行した。   その結果、行為に伴って痛みが与えられた時、自由選択条件と比較して強制選択条件で推定時間間隔が有意に長くなることが示されました(図2)。つまり他者強制された時に痛みを伴うと自分への原因帰属が減少していました。驚くべきことに、自由選択条件と強制選択条件では、痛みの程度は同等であるという結果も得られました。これらの結果から、他者のせいにするといった原因帰属は、ネガティブな出来事そのものよりも自分でその行為を選択したかどうかが重要であることが示されました。この成果は、患者教育の際に患者の自由意志を確保する重要性を示しています。   図2:実験の結果 A:時間推定の結果、値が小さい程キー押しと音との時間間隔を短く推定しており、原因帰属が強いことを表す。痛みが提示された条件において、自由選択と比較して強制選択が有意に長くなった。 B:痛みの結果、自由選択条件と強制選択条件で有意な差は認めなかった。データは平均±標準誤差を表す。*p<0.05 NRS:Numerical Rating Scale 本研究の臨床的意義および今後の展開 本研究によって、原因帰属は自由選択が重要な要因であることが示されました。今後の研究では、痛みの原因帰属の根底にある認知過程が患者の行動を変化させるかどうかを調べる予定です。 論文情報 Kazuki Hayashida, Yuki Nishi, Taku Matsukawa, Yuya Nagase, Shu Morioka I am not the cause of this pain: An experimental study of the cognitive processes underlying causal attribution in the unpredictable situation whether negative outcomes. Consciousness and Cognition, 2023 問合せ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 畿央大学大学院健康科学研究科 センター長/教授 森岡 周 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: [email protected] 2023.12.13 亜急性期脳卒中患者の麻痺側上肢の上肢機能に対する使用頻度の傾向~ニューロリハビリテーション研究センター 脳卒中後上肢麻痺への評価においては、運動機能だけでなく生活の中での使用頻度を評価することが重要です。上肢麻痺の評価には、Fugl-Meyer Assessment(FMA)とMotor Activity Log(MAL)の2つの評価法が広く採用されています。FMAの上肢項目(FMA-UE)とMALの間には相関があることが明らかになっていますが、FMA-UEのスコアにおける重症度と使用頻度の傾向の違いについて明らかにした研究はありません。岸和田リハビリテーション病院の平山 幸一郎氏、松田 麻里奈氏、本学客員研究員 渕上 健氏、本学 森岡 周教授らは、FMA-UEのスコアをSegment回帰分析により統計的に分割し、MALにおける麻痺側上肢の使用頻度の傾向の違いを明らかにしました。この研究成果は、BMC Neurology誌(Trends in amount of use to upper limb function in patients with subacute stroke: a cross-sectional study using segmental regression analysis)に掲載されています。 研究概要 脳卒中患者の約33-80%は、発症後3週間以内に上肢麻痺を呈し、麻痺側上肢の不使用はさらなる機能低下を招く可能性が指摘されています。そのため、麻痺側上肢の運動機能のみでなく、日常生活における使用状況の評価も重要です。麻痺側上肢の運動機能と生活における使用頻度は密接に関連することが多く報告されています。一方で、Schweighoferらは、Constraint-induced movement therapyの効果を検証する大規模RCTに参加した被験者のデータを再解析し、コンピュータシュミュレーションに基づく上肢麻痺の回復モデルを検証した結果、治療を受けた1週間後のWolf Motor Function Test(WMFT)スコアが、1年後の麻痺側上肢の使用状況を予測し、ある一定のWMFTの得点を超えるか否かで、使用状況が大きく変化する可能性を示しました。この結果から、上肢麻痺へのリハビリテーションを行う中で、ある程度の運動機能の回復を担保しなければ、生活の中で麻痺側上肢を使用することは困難であることが考えられます。しかし、麻痺側上肢の運動機能の程度に対して、それぞれの運動機能に対する使用頻度の傾向について分析した研究はありません。岸和田リハビリテーション病院の平山 幸一郎氏、松田 麻里奈氏、本学客員研究員 渕上 健氏、本学 森岡 周教授らは、FMA-UEのスコアをSegment回帰分析により統計的に分割し、MALにおける麻痺側上肢の使用頻度の傾向の違いを明らかにしました。 本研究のポイント ■ FMA-UEにおけるMAL-Aの傾向の変化および変化するポイントをSegment回帰分析によって検討しました。 ■ FMA-UE:45.3点を境にMAL-Aの回帰直線の傾きは大きく増加しました。 ■ 亜急性期の脳卒中後上肢麻痺において、FMA-UEが45.3点に達すると、麻痺側上肢の使用頻度の傾向が変化する可能性が示唆されました。 研究内容 初発の発症後3ヶ月以内の脳卒中患者203名を対象としました。対象者のFMA-UE、MALのAmount of Use(MAL-A)を評価し、FMA-UEに対するMAL-Aの傾向の変化を捉えるために、FMA-UEを独立変数、Mal-Aを従属変数として、Segment回帰分析を行いました。Segment回帰分析とは、異なるグループに分類された独立変数が、これらの領域で変数間に異なる関係を示す場合に用いられる統計手法であり、分割された独立変数における領域の区間は変曲点(Break point)として算出されます。Segment回帰分析における変曲点とは、以前に確立されたパターンから変化を示す可能性がある特定の点のことです。Segment回帰分析におけるBreak pointのフィッティングは、Akaike Information Criterion(AIC)を用いて検討しました(図1)。   研究の結果、FMA-UE 45.3点でMAL-Aの傾きが大きく変化し、45.3点以降では、MAL-Aのスコアに大きなばらつきが認められました。つまり、FMA-UE 45.3点を境にMAL-Aのスコアは大きく改善する可能性が示唆されました。   図1:FMA-UEとMAL-Aに基づくSegment回帰分析   FMA-UEとMAL-Aは有意な正の相関を示し、FMA-UE:45.3点で回帰直線の傾きは変化しました。回帰直線の勾配は、変曲点より下でx=0.03、変曲点より上でx=0.12でした。 本研究の臨床的意義および今後の展開 この研究では、初発の亜急性期の脳卒中患者を対象に、FMA-UEとMAL-Aに基づいてSegment回帰分析を行いました。Segment回帰分析では、FMA-UEのスコアを統計的に分割し、MAL-Aにおける麻痺側上肢の使用頻度の傾向の違いを明らかにしました。結果として、FMA-UE:45.3点以上でMAL-Aの傾向は大きく変化し、45.3点を境にMAL-Aのスコアは大きく改善する可能性が示唆されました。この知見は、麻痺側上肢へのリハビリテーションにおいて、機能訓練や生活への参加に向けた介入などの治療戦略を考える上で、非常に有用であると考えています。 論文情報 Koichiro Hirayama, Marina Matsuda, Moe Teruya, Takeshi Fuchigami, Shu Morioka Trends in amount of use to upper limb function in patients with subacute stroke: a cross-sectional study using segmental regression analysis. BMC Neurology, 2023 問合せ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 畿央大学大学院健康科学研究科 センター長/教授 森岡 周 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: [email protected] 1 2 3 … 6 次へ ニュース&トピックス カテゴリ すべて 重要なお知らせ イベント トピックス KIO Smile Blog KIOキャリアナビ プレスリリース キーワード検索 アーカイブ 2024年 2023年 2022年 2021年 〒635-0832 奈良県北葛城郡広陵町馬見中4-2-2 TEL.0745-54-1601 FAX.0745-54-1600​ 受験生の方へ 在学生の方へ 保護者の方へ 卒業生の方へ 企業・行政の方へ 地域・一般の方へ 教職員専用 個人情報保護の取扱い 採用情報 サイトマップ 学校法人 冬木学園 〒635-0832 奈良県北葛城郡広陵町馬見中4-2-2 TEL.0745-54-1601 FAX.0745-54-1600​ © Kio University All Rights Reserved.​

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